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* 設定(愁司)

2006年01月09日 18:00

以前サイトで掲載しておりました、我が家の住人達の設定話を
こちらに移動しました。



【狼達の昔話】


此処の住人達が、此処に住まう以前の話を
管理人が書き綴りました。


管理人が、住人達をお迎えする前に構想した話を
小説形式で紹介しております。
アニメや漫画などからインスピレーションを受け、独自に構想を練り
現在の住人達の設定に辿り着きました。

もしかすると、他のサイトさまでも似た様な設定があるかもしれません。
しかし、住人達は管理人独自の発想の元に生まれた子です事を
ご承知ください。

小説には設定上、管理人が登場します。
人に寄っては美化していると感じられ、不快に思われるかもしれませんが
経緯を語る以上、どうしても削ることが出来ませんので何卒、ご了承下さい。

また、読んだ後の非難や苦情等は一切受け付けません事を
ご承知下さいますよう、宜しくお願いします。


では、どうぞ時間を掛けて読んでやって下さい。
静かに、ゆっくりと、話の中に身を埋めて楽しんで下されば幸いです。







■血色の瞳と夕焼けの瞳 愁司編■





天より降りそそぐ、淡く冷たい粉雪
霞む視界の線
感覚すらなくなる空腹
身を隠しながら、瞳を凝らし、走り続ける森の中





「居たぞ、こっちだ!」

「頭は狙うなよ!死んだら元も子もないからなっ」

「そんなヘマすっかよ!」





声と同時、空気を切り裂く発砲音
稲妻のように走る激痛
それでも立ち止まる訳には行かなかった。
立ち止まれば、それは死を意味する-----



唯一の味方は、姿を覆い隠してくれる森と白い雪だけ。
草木を揺らさず、且つ素早く慎重に走る。



「クソッ! 犬畜生がぁーァっ!!! どこ行きやがったっ!!!?」

「確かに手応えがあったんだがなぁ」

「まぁあれだけ痩せて、怪我もしてるんだ。そう遠くへは
行くまいよ」

「白い狼なんざ、なかなか手に入らんからなぁ…ックックック…
…ぜってぇー捕まえて大儲けしてやる!」

「まずいな…日が暮れて来た。今日はこの辺にしよう」


声は少しずつ遠くなり、足音も遠ざかって行くのを耳で確認し、
一匹の狼は ようやく体を横たえ緊張を解く。




何故だ…何故これだけの仕打ちを受けなければならない !!
俺が何をしたと言うんだっ-----





どこへ行こうとも 謂れのない迫害や、排除を受ける。


【家畜を殺すから 金になるから】


利己的で理不尽極まりない理由で、傷つけられる。


人間が牛や豚を捕食するように、狼も自然の営みに沿って
行動しているだけに過ぎないのに…

















追われ、傷つけられる日々。
腹を膨らませる程の動物も食えず、肉は落ちる。
昼も夜も気が休まらず、眼だけがギラギラと光を増し、
形相を変えていく。



いつまでも終わる事のない、無限地獄のよう------



安らかだった あの頃は遠い昔で、その暖かな日差しも
泣きたくなる程に柔らかな幸せも…思い出せない。

増えていく傷は舐めても舐めても治らず、
一日毎に新しい傷が増えていく様は 心まで蝕んでいくようで…




何故だ……

何故だ………

何故だっ !!!!!!!!




誰に問うでもなく語りかけるが、答える者は無く。
追われ続ける この狼の感情は やがて飲み込まれていった。
[憤怒、憎悪] という感情に。


月の明かりも差さぬ漆黒の夜の中
怒りを込めた狼の遠吠えが 哀しくひとつ響き渡る -----……













ぴくりっ、と体を震わせた。

「? どした峡司?」

人間の問いに答えぬまま、遠くを見つめる双紫の瞳を持つ峡司は
立ち上がり、姿を狼神へと変える。


翼の生えた紫色の瞳をもつ狼


神々しいまでの姿を現し、一言だけ告げる

「行ってくる」

軽く蹴ると、空高く舞い上がり加速しながら翔けて行く。

どこへ行くとも、いつ還るとも告げず行った狼神を
人間は黙って いつまでも その姿を見送った…
























遠く遠く離れた異国の大地


確かに感じる波動
力自体は微弱なのに対し、その波動の色は深く、濃い。
相反する感覚が共存する様に、狼神は身を震わせた。


見覚えのある感覚
飲み込まれそうになった あの感覚
忘れようにも忘れらない

禍々しい思念に囚われ、目の前が紅蓮に染まる
激しく腹の中をのたうつ[憤怒]という名の力
その力だけが己を奮い立たせた




あの時、仲間達の声が聞こえていなければ
今とは違う、変わり果てた姿でいたことだろう

自分には、仲間達が居た。
我を取り戻すきっかけとなってくれた仲間達が。
しかし、今感じ取る仲間の波動は きっかけさえ無く
自覚の無いままに あの禍々しい感覚に飲み込まれてしまった
哀しい波動が垣間見える。


気づいてやれなかった…
その怒りに

気づいてやれなかった…
その哀しみに


すまない…すまないっ…




繰り返す言葉に込めた感情を力に変えて。
救いたい…と思う。 助けたい ! と。

あの時、仲間達が自分を救ってくれたように
不甲斐ない長(おさ)の自分でも、生き残ってくれと託した
仲間達の意思に答える時が来たと、狼神は確信する。

見え始めた大いなる森の一点に波動を見つけると
そこへ目掛けて風のように翔け降りていく。















…目を覆いたくなるような惨状が用意されていた


散らばる肉片

事切れる断末魔の声



興奮して上がった息

肉を噛み、血を啜る音


痩せこけた体にギラつかせた瞳で、すでに硬くなり肉塊になった
人間に覆いかぶさっている 一匹の狼



    …… ベロリッ-----



吐き出される白い吐息を塗りつぶすように、赤い血が口より零れ落ち
朱色の染みが雪を点々と彩る。
ぎらつく瞳を輝かせながら、食事し終えたことを告げ、
血のついた赤い舌が口の周りを拭うと、肉塊から降り狼神に近づく…




と、同時 喉元を目掛け 噛み付こうとする。





言葉は必要とされなかった。
どちらが強者かということを、身を持って知らせる為には
力で抑えるしか術はない。

力は均衡している…
空を翔ける翼と、大地を駆る大きな爪がある狼神と均衡している。
その均衡の意味を、身を持って知る狼神。



憎しみの感情が強いということなのかっ



これほどまでに深く暗い憎しみを、初めて見たのだった。













ゴウゴウと唸り、力を誇示せんとする二匹の狼
犬のそれなど比ではなく、雷鳴が大地を這うような低い声が
森にこだまする。

牙が、爪が お互いの体を傷つけ、白い大地を赤く染めても、
争い続けて。
どちらともなく、一歩引いた時、初めて狼が口を開いた。




「人間に飼われて牙が抜けたか… 狼神」

悦楽したような表情を浮かべ、争うことに喜びを見出した狼は
狼神を煽る。

戦う度に、噛み付く度に狼神の体と共に香る人間の匂い。
野生では決して香らない人間の匂いが染み付いていて
それが、狼の怒りをさらに燃え立たせる。


「飼犬になり下がった狼なぞ、狼神と呼べるのかっ!!!」


食らいつくスピードは尚も増し、日々受け続けた傷を狼神に刻むように
狼は牙を立て、押し付ける。
狼神は致命傷にならない様に交わしながら、牙と爪を
競り合わせている内に、感覚を掠る「何か」を感じ取っていた。

その「何か」を引き出す為に、攻撃の手を止め、防戦に集中する。







しばらく経つと狼神が感じた「何か」は
狼に変化をもたらし始めた。



時折に、片方の瞳の色が淡く滲にじ んで……



「何故俺が傷つけられるっ! 俺が何をした!
何も判らない!誰も答えないっ!」



ぽろり…、ぽろり…



戦うことを止められない狼の淡く滲む朱色の瞳から雫がこぼれ落ちる。
とうに枯れ果てたはずの涙。
朝露のように精練で、淡く儚い涙。


言いようの無い孤独と不安

追い立てる怒りと空腹

終わりのない苦しみ



そんな想いが瞳から溢れ出て行く。





「どうした !! 狼神の力とはこんなものかっ 笑わせてくれるなぁ狼神よ! 」



どろり、どろ…り…



戦うことを止めたくない狼の、深く禍々しい赤色の瞳から雫がこぼれる。
けれどその涙は赤い、紅い血の涙。


己の血であろうが、人間の血であろうが
身を捩よじる程に感じる悦楽

肉を裂き、呻く声に理由なく燃え立つ心


そんな想いが瞳から溢れ流れる。





少しずつ、少しずつではあるが 狼神が力に圧される



「くっ…!」



牙をかわす体が重く感じられ、狼の攻撃の手が次第に早まる。

それと比例するように、狼の精神も少しずつ同じように
壊れかけ始める。
黒い染みが少しずつ無垢な色を侵食していくがごとく…。










【…じ……、……きょ……】


「?」


どこからか声がする。
小さな声、けれど確かな声。
攻撃を避けながらも、小さな声を聞き取ろうとした。


「余所見する余裕があるとは いい度胸してるじゃねぇかっ!!!!」


皮肉った狼の声を尻目に一層耳を澄ませる。
聞き取らねばならないと、どこかで確信している自分がいる。




【…き……、…じ……… 】






どこだっ! 俺は此処だっ






【…きょ………じ………………きょぅ……じ ……… 峡司 !! 】





人間の声だった。
いつも自分の傍にいる人間の声。




何故、この時にあいつの声が聞こえるんだ




疑問に思うと同時、腰骨から伝うものが背筋へと走る。
半瞬にして全身を駆け巡り、支える体に力が入る。





…?……そうか!!





声に集中すると、峡司は語りかけた。



[ おい ! 俺の声が聞こえるか]

【峡司?! うん、聞こえるよっ】

[俺の目を通して、奴の姿が見えるだろうっ]

【見えるよ。どうしたの あの子。 ひどく哀しんでる… 】

[哀しんでる、か……そう見えるか]

【そうとしか見えないよ】


きっぱりと言ってのける人間に、峡司は驚き
そして緩やかに微笑む。
自分はこの人間を選んで間違っていなかったと…



[ …お前なら出来るかもしれん]

【何が?】




隙をついて大きく振り上げられた狼の爪を一瞬避けきれず、
後足を掠り、赤い血が白い大地に落ちる。




【峡司 !!! 】

[…っ、掠っただけだっ]



体勢を立て直しながら、狼との距離を計る峡司



[名を…]

【ぇ? 】

[奴に名をつけてくれっ]

【名前?! 何で?! 】

[本来、俺達 狼に名などない。
だが、お前から与えられた名は命を与える。
あいつに、命を与えてやってくれ! 今まで虐げられた過去も含めて
新しい道への一歩を照らしてやってくれっ]

【…わかった… ! 】






嘘のように力が沸いてきたのは、きっと名を呼ばれたから
体が軽くなったのは、きっと心配してくれたから


誰かが自分の存在を確かめたとき、初めて自分が
其処に存在していることを知る。



哀しくて、つらくて、痛くて…
けれど、誰も居なかった。 何も無かった。
自分で耐え、自分で拭うしか無くて、その重荷に潰されそうになった狼。
狼を救うためには、狼が存在するという【名】が必要で。
その【名】は、必要としてくれる存在が付けなければ
何の意味も持たない。










刻一刻と変貌していく狼
残された無垢な感情と、荒々しく暗い感情がせめぎあい
精神を侵食し、壊していく。



[まだかっ!? 早くしないと奴が死んでしまうぞっ]



焦った気持ちが急に静まった。



別の感覚がふわりと暖かく峡司を包み、狼の前へと体ごと進ませる。
その暖かいものは、狼を柔らかく包み込むと、気が狂う程に暴れていた
狼の動きが鈍り、……止まる。





【…夕焼けみたいに怖いくらい綺麗な色の瞳…
 一瞬でも同じ色をしていない秋の空みたい ……
 秋の空を瞳に映し、その空を司る…
 ………愁司……】





パ----------- ンッ!





硝子が砕けるような音がした。
悦楽の瞳を抱え、禍々しい形相をした狼は姿を消した…。
























冷ややかな何かを足に感じ、その得体の知れない感覚に飛び起きる。


「?! ここは…?!!」


見慣れない所、見たことの無い……
人間!


何故こんな近くまで人間が居ることに気づかず寝ていたのか
判らなかった。
飛び起きて威嚇すると同時、体に走る激痛。
思わず床にへたり込む。



「コラ!まぁだ動いちゃ駄目だってば」



見たことの無い人間が、聞いた事のある声で近づいて
自分を抱き上げると柔らかな布の上に横たわせ、白い布を足に
巻きつけている。
冷ややかな感触に飛び起きた、あの場所に。




こんな人間…見たことが無い…




奇妙な物を見るように人間を見ると、見たことの無い顔をした。
目を細めながら、目じりを下げ、口の端を少しあげて…




「気づいたのか?」
「あ、峡司。 うん、まだ ぼぅっとしてるみたいだけどね」




ゆっくりと近づいてきたのは人の姿をした狼神であった。
同じように白い布を足や腕に巻かれている。




「…きょ……ぅじ…」

狼神と言おうとした口が、意思とは反対に名を呼んだ。

「…覚えてるか?」



深い落ち着いた声で語りかける峡司に、記憶を探る。
何か…霞(かすみ)が掛かったようで…



「……あまり…はっきりとは覚えていない…」

「名前を与えられたんだよ、お前は」

「俺に…? 名…?」


誰が、何のために俺に名前など与える必要がある。
一匹で生きてきた。
仲間も見つからず、人間に追い立てられて、全部自分の力で
切り抜けてきた。
俺に名を必要とする仲間は……居ない…。





「覚えてない?私がつけたんだよ?」

「…?」



さっきの人間だ。
俺の知ってる人間とは随分違う。
殺気立った目をしてるものだろう、人間という生き物は。
それが…なんなんだ、コイツは。
さっきからよく笑う。


……?笑う?
なんだ、それは。
俺は何故そんな言葉を知ってる…?




「言ってやってくれ」

峡司は人間に優しそうに言うと、同じように人間も優しそうな顔をして
頷いた。


…?優しそう…?
なんだ、その感情は。
そんな感情、俺は知らない。
なのに何故言える?何故判るんだ?





「愁司。君の名前だよ。」

「…しゅ…ぅ…じ。…俺の名前…」

「カッコイイでしょぅ~?!」



どうだ!と満面の笑みを浮かべながら胸を反らせて、自慢している人間。



「愁司。もう お前は一人じゃない。一人で抱え込む必要もない。
此処に居るのは家族なのだから…」

「…………」



峡司は何を言っている…
一人じゃな…い? …家族…??
俺は…いつだって一人だった…
誰も居ない、誰も何も答えてはくれない。
家族はおろか、群れも仲間もなかった…






呆然としていると、ふわりと頭を撫でられた。


「痛かったね…、つらかったね。 よく一人で頑張ったね」


頭を撫でられて、傷のついた痕を大事そうに撫でられた。
暖かい…優しい、柔らかい手で。





視界が歪む
滲んでぼやけて よく見えない
不思議と腹は減ってないのに、何故視界が歪むんだ。




「…っ…、…なんだ…これは…っ…、…っ」



目から流れ出る水
そうだ…俺はこれの呼び名を知ってる…

死んでいたはずの感情が…戻ってきたのか…



「名を与えられたお前は、新しい道を歩き始めたんだ。
今までの過去も含めて、もう一度始められるんだよ、此処から」


峡司の言葉を聴きながら、流れ出る水を…、
涙を拭えない筈の体は、人のそれとよく似た姿を形どり
俺の姿は ゆるりゆるりと変わって…
そして涙を拭う。





「愁ちゃん。目、あの時のままだね…?痛くない?
私の友達に目を治してくれるお医者さまが居るけど…治してもらう…?」


心配そうに見つめる人間の声と空気が
ひどく心地良くて、片方の…血色の瞳を手で覆いながら
無意識にふわりと微笑んだ。


「…いや。俺はこのままでもいい。
不気味な目だから、お前が変えろというなら変えるが…」


すると、人間は瞳を覆っていた俺の腕を取り、
両方の瞳を見つめて言う。


「とても綺麗な瞳だから、このままの方が愁ちゃんらしくて良いよ」




与えられる微笑の暖かさが気持ち良い
こんなにも暖かいものだとは知らなくて、知らず体が震える






「おかえり愁司」

峡司の言葉に顔を上げる

「おかえり、愁司。 おかえり、峡司」

人間の言葉に、一度峡司と目線を合わせると、
再び人間に目線を戻し…




「「……ただいま…」」















暖かい言葉が口から紡がれた瞬間、懐かしかったあの頃の記憶と
安らぎが思い出せた。



理由のない攻撃も、感覚が麻痺するような空腹感も
抑えようのない怒りも全部…この瞳の中にある。
でも、あの時のように溢れ出ることは
此処にいれば 無いと思う。



俺が必要だと、俺の存在が此処にあるのだと、
俺の名をいつも呼んでくれるから。








優しい微笑みと共に…------









end.





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